高尾山古墳についての考察


■ 道路と古墳を両立させる件について

沼津市役所の見解では、
道路と古墳を両立させる案を検討したが、どれも道路構造令の基準を満たすことが不可能だった
と、されていますが、こう言われると、
本当に不可能なのか、気になります。

通常、このような計画の検討案は、一般には公開されないので、
一市民としては、詳細が分からない状態での、賛成か反対という、
丁半博打に近い形で、政策が進められていくのですが、
今回の高尾山古墳と道路建設の問題は、
市議会議員の活躍によって、いろいろ情報が外に出てきたので、考察してみました。


簡単に手に入る、新聞記事で公開された情報はこんな感じ。

☆ 沼津市の両立検討設計案(paipudesのブログ記事より

高尾山古墳と計画道路【沼津朝日新聞 平成27年7月14日(火)号】

高尾山古墳と計画道路
市が両立検討設計案を公表
 都市計画道路沼津南一色線の建設に伴う高尾山古墳(東熊堂)の扱いに関する問題で、市は道路設計案を公開した。
 この設計案は、古墳をできる限り保存しながら道路建設を進めるために検討されたもので、合計で九案。
このうち八案は、政令の道路構造令で定められた設計基準を満たすことができないなどの理由により不採用となり、
残る一案が市の方針として採用されている。
 古墳取り壊し調査予算を含む補正予算が可決されるなどした市議会六月定例会の終了後に設計案を公開した理由について、
市では「地域住民の方への影響等も考慮し、公表は差し控えさせて頂いておりましたが、
高尾山古墳への関心も高まっているなか、市内部の検討経過についての透明性を高め、市民にも広く理解して頂くため」としている。

 設計案の要旨は次の通り(カッコ内は不採用理由)。
 @道路を古墳西側に迂回する(新幹線交差部との接合が不可能)。
 A新幹線交差部と接合できる形で道路を古墳西側に迂回する(国道一号江原交差点と十字に交差できなくなる)。
 B道路を陸橋化し古墳上を通過する(勾配が道路構造令に抵触、橋桁が古墳と接触する)。
 C道路をトンネル化し古墳下を通過する(勾配が道路構造令に抵触、トンネル上の土の厚さが不足)。
 D古墳墳丘部の四割近くに重なる形で道路を古墳西側に迂回する(多くの用地追加取得が必要となる割には古墳保存部分が限られてしまう)。
 E道路構造令に抵触しない範囲で道路をトンネル化する(トンネル上の土の厚さが不足、近隣宅地と道路を接続するための側道が新たに必要)。
 F現在の完成部分から道路を盛り上げ、墳丘は失われるが、古墳周溝(周囲の堀)の一部を埋め立てる形で保存する(道路構造令に抵触)。
 G新幹線交差部から道路を盛り上げ、墳丘は失われるが、古墳周溝の「部を埋め立てる形で保存する(側道が必要、など)。
 H道路のうち東側歩道部分を盛り上げ、墳丘は失われるが、古墳周溝の一部を埋め立てる形で保存する。

【沼朝平成27年7月14日(火)号】

☆ 検討案の図面を入手

新聞記事は簡単に手に入るとは言え、文字だけの情報では全くわけわからないので、
地元の?市会議員に電話して頼むと、
図面のコピーをもらえました。
A3判で設計図のコピーのコピーなので、細かい字は読めないものの、概略はよくわかります。

「透明性を高め、市民にも広く理解して頂くため」ということなので、サイトに公開。
沼津市、高尾山古墳両立検討案PDFファイル
全部で13ページあり、すごく重いので、
分割したのは下記です。

S字カーブで迂回する案
上下を通して迂回する案
墳丘を壊して一部のみ保存する案
決定案として提出された案

■ 沼津市の設計条件をもとに

条件が規定されないと、検討のしようがないので、
図面やTV放送や、会見の時の話からうかがえる、
沼津市役所の道路設計の条件や、
新聞記載の地元自治会の要望などを列記して、
今回の考察の基本条件とします。

☆ 道路構造令の、第四種第一級の道路条件を満たすこと、

設計速度60km、 曲線半径150m以上、緩和値120m以上、 縦断勾配5%以下、緩和値7%以下。
 殿岡修市議が、「時速60キロの設計速度を低減すれば古墳迂回(うかい)が可能ではないか」と検討を求めたが
後藤久・道路建設課長は「安全な通行を確保する責務がある」と検討を拒んだ。と、いうことなので、
今回計画の道路が接続する予定の前後にある、岡宮の道路に、時速40kmの標識が掲示されていたり、
江原公園交差点の先のリコー通りに、時速50kmの標識が出ていても、
時速60kmの道路規格で設計しなければならないらしい。

☆ 新幹線の桁は現状のまま使用する

1964(昭和39年)開業の新幹線の桁は、この道路を通すように間隔を設計して作ってあるので、
動かせない(らしい)。その割に、上り線の左車線が桁の外側を通る設計なので、
50年以上前の設計時には、二車線で計画したのを、無理やり四車線にしてるのかも。

☆ 江原公園交差点に接続させる

 50年以上前に作られたという都市計画案を見ると、
国道246号を、沼津市の市街地中心部分まで引き込む事が目的で、
そのためなら、当時から既に家が立て込んでいた金岡村の中心地を突っ切っても仕方がない、
という計画のように考えられるので、リコー通りの正面に接続させる必要があるらしい。

☆ 新たな用地買収はしない

東熊堂では道路建設用地確保のために宅地移転などで協力している、
既に移転した人に更に移転してくれとは・・・。とか
NGの理由に、近隣宅地と道路を接続するための側道が新たに必要、とか、書かれているので、
古墳迂回のための追加の用地買収は、やりたくない、ように考えられる。

☆ 古墳の保護ライン内には手を付けない

 最終案で、古墳のほとんどを破壊する計画を立てて、それが実行案になっている事からして、
設計思想が、最初の第一案と、実施予定だった第九案は、全く矛盾しているのですが・・・。
第一案や第二案では、古墳や遺構を囲む周囲5mラインをコントロールポイントとしていて、
たとえ現状では既に破壊されて、住宅や道路になっていて存在しない部分でも、
その部分の道路は、迂回させて計画しなければならない、という方法で設計しています。

 普通一般に遺跡の保護を考える場合、
破壊されて存在しない部分は保護する必要は無いと思われるので、
古墳の残っている部分のみを迂回する形で、120mカーブのS字曲線を書いてみると、
道路と重なるのは、破壊された周濠部分のみで江原公園交差点につなげられ、
破壊された部分も含めて、墳丘全体の復元も可能になります。

 とはいえ、前記の条件の、道路建設に伴う追加の土地買収はしたくない事や、
周濠部分とはいえ、遺構の一部に幹線道路を作ってしまうと、
将来、古墳全体を復元する、という可能性が無くなってしまうので、
市役所の考えた第一案や第二案を尊重して、
遺構の周囲5mを囲む、全長104mの範囲を保護する方向で検討します。

☆ 市道1672号線を分断しない

 市道1672号線と言われても、地元の人間でも何処だか良くわからない名前ですが、
江戸時代から明治時代まで、金岡村のメインストリートになっていた、
高尾山古墳の北側を、東西に走る道の事です。
 全長300mほどで、東西両側がT字路に突き当たって終わる道なので、
沼津市の計画の通りに、右折レーンのある交差点として整備すると、
狭い道にもかかわらず、
江原公園交差点が渋滞したときに、抜け道として利用できてしまうので、
計画とは逆に、分断して、住宅地内の路地の入り口に見える方が、
交通安全に寄与すると思われるのですが、
江戸時代の金岡村の神輿の渡御や、名主の山田源次郎の足跡にゆかりのある道なので、
歴史に配慮する視点から見れば、道路の位置は変えない方が良いのかも。グーグルマップより明治資料館

☆ 渋滞緩和と史跡活用

沼津朝日平成27年5月27日号の記事によると、
門池地区連合自治会長は、
「門池地区は慢性的な渋滞があり、交通事故も多い。
沼津南一色線が開通すれば渋滞が緩和され、
通学路の交通安全に寄与するのではないか」と歓迎する。
 その上で、「沼津には多くの古墳があるが、史跡として活用できていない。
高尾山古墳を保存して史跡として活用するとしても、
駐車場などの必要な施設整備は現状では難しいだろう。
むしろ詳細な映像や画像の記録を残し、それらを誰でも見られるようにした方が、
古墳の価値を多くの人に伝えられるのではないか」と話す。

と、書かれています。

平成19年に、国道246号の延長が、国一の上石田の交差点から、学園通りの共栄町の交差点に移った時、
開通前は、渋滞解消が期待される、と言われていましたが、
いざ開通してみると、もともと混雑していた共栄町の交差点の渋滞がさらにひどくなって、グーグルマップより金岡産直市
現在でも、細い脇道を迂回して、246に出た方が早い状態になっている事からして、

現在の計画のまま、国道246号の延長を江原公園交差点までつなげた場合、
現在、共栄町交差点を中心にひどく渋滞しているのが、
渋滞する場所が、江原公園交差点に移動するだけで、
現状でも、県下有数の渋滞ヶ所である江原公園交差点の渋滞が更にひどくなれば、
東熊堂付近の、渋滞を避けて脇道へ抜ける車の数は、
増えることはあっても、減りはしないと考えられます。

また、史跡として活用するには、
駐車場や資料館などが必要になるが、施設整備は難しいという主張については、
高尾山古墳の300mほど西側に、
明治資料館という歴史展示施設があり、駐車場も付属しています。
3Fの沼津の歴史のコーナーに、高尾山古墳の資料を展示すれば、
費用をほとんどかけずに、駐車場や資料館の問題は解決し、
途中にある、金岡産直市への集客も多少、期待できるのではないでしょうか。

■ 両立できる案が整いました

図面に書かれたものや、新聞記事などの報道から考えられる条件は、以上の七つになります。
ですが、世間一般では、こういう場合、
「追加費用を払いたくないから、予定通り道路を作る」
というのが本音なのではないでしょうか?
とはいえ、
沼津市の財政から見て鉄道高架に反対、と主張する議員に、財政は健全だと言っている手前?、
「お金がないから古墳を壊す」という主張は、沼津市役所からはされていないので、

先にあげた七つの条件だけで、道路と古墳を両立させる案を考えてみると、
意外と簡単に、両立できる案が整いました。



長くなると、読み込みが遅くなるので、次ページへ続く




2015(平成27)年8月16日作成